2017-06

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vol.1 そのオトコ危険につき。

「なんだと!この野郎っ!」
鋭い罵声とともに、金属にモノが叩きつけられたような音が響き、それまで賑やかにざわめいていた店内が水を打ったように静まり返った。
女性客たちは不安そうに顔を見合わせた。彼女たちのそれぞれの首、耳、指には高価そうに輝くアクセサリーが揺れている。
女性客と同じテーブルで接客中の男たちも、中腰になる。

店の中ほどで、長身の黒づくめの男が立ち上がり、軽く笑みを浮かべて客に向かって声をかける。この店のオーナーか。
「みなさん、大変失礼いたしました。ロッカールームに迷い込んだネズミでも退治した音でしょう。どうぞそのままで。」
女性客たちはほっとしたようにまた深々とソファに腰を静め、男たちもホストの顔に戻っていく。
ここはホストクラブ【argonaut】。

ホストたちの控え室、ロッカールームでは細身で中背の女性的な顔をしたホストが仁王立ちになっていた。
「おいっ!今度俺の客を横取りするようなことをしたら、この町には居られないようにしてやるからな。覚えておけよ!」
白い顔を朱に染めて、吐き捨てるように言う。
ロッカーに背を叩きつけられて転がっているのは、金色の長髪の男だ。
細身のホストに殴られて、唇からは赤いものがにじんでいる。
思ったより長身の身体をそっと起こして、紫色のスーツの汚れを両手でぱんぱんと叩く。
左手で唇の汚れをぬぐうと、細身のホストよりは20センチほど高いところから見下ろして慇懃に言う。
「わたしは大町さまを横取りなどしてはいませんよ。大町さまがわたしに用事があるというので、約束の場所に行っただけのことです。」
「けっ!何を言ってるんだよ。あのメスブタからたいそうなプレゼントを貰ったそうじゃないか。店の外で会おうなんてこの店の規則にも違反してるだろう?」
「同伴は違反じゃないはずですが。」
「店で遊ばせてやるのがホスト風情の仕事だろう!モノにつられてホイホイ出て行ってんじゃねーよ!」
「時計の100万程度、穣さんだっていただいてるんじゃないですか?」
「へー貢物は時計だったのか?大町のメスブタも持ってるもんだな!」
「そのメスブタにご執心なのは、穣さんでしょう。」
「てめぇ・・・!」
長身のホストはロッカーをひとつ開けて、扉についた鏡で顔の傷を調べる。
「穣さん、わたしはこれから指名が入ってます。これ以上暴力をふるうのならオーナーに話しますし、この傷、残っちゃったら穣さんに責任とってもらわなきゃなりませんよ。」
唇の横の傷を指でそろそろと触りながら痛そうな顔をして、しかしきっぱりと言う。
「ぐ・・・」
「それに今からの指名は、他ならぬ大町さまですからね。わたしのこの傷をみたら、なんて言うか・・・」うすら笑いを浮かべて畳み掛ける。
そのとき、黒ずくめのオーナーがロッカールームに入ってきた。
「あ、オーナー」救いを求めるように細身のホストがオーナーを見る。
「穣、おまえ今日は上がれ。」
「ぇ?」
「さっきの蓮を殴った音、フロアに丸聞こえだ。」
細身のホストは、思いがけない事を聞いたように目を見開いた。
「それに今、大町さまがいらして蓮を指名している。今日は上がれ。」
くやしそうに唇をかみ、紅潮した頬をもっと赤くして、穣はロッカールームから出て行った。
まだ鏡を見ている蓮にオーナーが声をかける。
「おい、蓮、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないですよ。」
「客の取り合いはやめてくれよ。穣は穣でこの店では古株だ。客も沢山持ってるんだからな」
「穣さんより、客を増やしてみせますよ。」
「頼もしいな。」
ふっ、と唇をゆがめた笑いを漏らすと、蓮は唇の横をぺろっと舐めてフロアへと出て行った。

**********************************************

その白い天井は一点のシミもなく、ただひたすら白かった。
蓮の首に回した腕を、無理やり自分の方に引き寄せ蓮の唇に自分の唇をつける。
脂肪のうっすらとついた身体を恥ずかしげもなくさらしているのは、店の客だ。
蓮はその女にされるがまま、ただ天井だけを眺めていた。
「ねぇ、わたしみたいなおばあちゃんとこんなことして平気?」
「大町さまはおばあちゃんなんかじゃありませんよ。」
心の中でどんなことを思っていたとしても、蓮の口をついて出るのは相手を喜ばせる言葉だけだ。
いや、彼女の皺に埋まった白粉だらけの顔でさえも、蓮には札束にしか見えてはいない。
「ね、蓮はどこで生まれたの?」
蓮のからだをまさぐりながら、彼女はうっとりしてささやく。
「・・・」
蓮は暫く躊躇したが、すぐに大町麗子の身体をくるっと回して自分が上になり、今度は蓮が麗子にささやく。
「天国ですよ。」
「あははは・・・!蓮ったら。」
「そしてまた天国へ帰っていくんですww」
「そうね。天国へ連れて行って!」
それからは麗子にとっての天国へと・・・

蓮の胸算用では、大町麗子はきっと自分にとって大きなBackUpになるはずだ。
いい目をみせておけば、店の1軒くらい持たせてくれるかもしれない。
そのためならば、どんな女とも寝るさ。そう、どんなに貪欲なメスブタともね。
汚いなんて思いやしない。俺は札束と寝てるんだ。

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