2017-07

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vol.7 泣きぼくろ。

信号待ちをする蓮の足元に、木枯らしが纏わりつく。
季節の移ろいは何処にいたって感じるのだけれど、あの福岡から上京して、歌舞伎町を追われ、千葉に移り住み、いつになったら終の棲家に辿り着くんだろうと、蓮を切なくさせる。

街には其処此処でクリスマスソングが流れている。
街ぐるみで、否が応でも年末に向けて気ぜわしさを煽り立てるつもりだな。
だいたいイベントそのものが、店や、メーカーの売上を上げるためのものなんだ。
クリスマス然り、バレンタインデー然り。
ま、うちの店も繁盛させてもらってるから、願ったり叶ったりだけど。
そうだ、クリスマスといえば、あそこにそろそろ行かないと。

蓮には、誰にも言った事がない秘密がある。
ホストとしての蓮ではなく、「沢村 陸」としての心の拠り所。
その拠り所を守るために、どんな仮面でもつけてみせる。
とにかく、俺は自分の店を持って経営者になるんだ。
オーナーとなって、自由にカネを遣える様になったら・・・!

そんなことを考えながら、蓮は信号が青になった横断歩道を歩いていく。

横断歩道を渡りきると、前面をガラス張りにしたテナントビルがある。
蓮の黒いコートや金髪や、冬色の衣服を身に纏った歩行者を映して、そのガラス張りの箱は天に向かって高々と伸びている。
蓮はふと立ち止まり、自分の後ろ側で怪訝そうに蓮を眺める、ガラスに映ったひとりの女を見ていた。
どこかで見た顔なんだが、どうも思い出せない。
思い出せそうで、名前も、どこで会ったのさえも思い出せない気持ちの悪さを胸に、蓮はそろそろと歩き出した。
ガラスの中の女の顔は、左目の下に泣きぼくろが一つ。50がらみの痩せた女。
泣きぼくろ・・・
はっと蓮は思い出した。
あの女は東子の母親だ。

千葉に来て、「風花」に入った頃、同年代のホストたちの中に現役の大学生が何人かいた。
女子大生のオイシイ話ばかりするので、「コンパするときゃ呼べよ」とからかっていたら、本当に誘われた。
まさか昼間には出られない顔だと言われるこのメンツで、女子大生とコンパをすればどうなるのかはわかりきったことだ。
そりゃすぐお持ち帰り決定になった。
「なんでお前ばっかり!」と非難轟々を背に受け、ストレートヘアを背中に垂らした今時の女子大生と彼女の部屋へ行ったのは、蓮にとっては至極当たり前のことだった。
「いただきまーす!」と言ったのが、自分だったのか、彼女だったのか。。。
とにかく眩しい陽射しをカーテン越しに感じて目を覚ましたのは、すでに次の日のお昼を過ぎた頃だった。
まだ隣でまどろむ彼女の首筋にキスをすると、夕べ脱ぎ捨てたらしい服を拾って、ゆっくりと身につけた。
気配で目を覚ました女子大生は、「もう行っちゃうの?」と毛布で身体を隠して半身を起こした。
左目のすぐ下に泣きぼくろ。それがたまらなく愛しくて。
「美味しかったよ。また、ね」
蓮はもう一度、今度はその泣きぼくろに軽くキスをして、部屋から出て行った。
振り返りもせずに。

蓮にとって、ごく当たり前のお持ち帰りだったのが、その夜からまた後悔する羽目になる。

「風花」の開店は夜の9時からで、それまでに店に入ればいいことになっている。
実際、店が稼動し始めるのは、10時前後だった。
だから蓮は、昼寝を終える夕方からそれまで、殆ど自分のマンションでPCをいじったり、「風花」の客にメールを入れたり、電話を入れたりといった営業をしている。
その営業の最中に、彼女からの携帯が入った。
女子大生は「藤崎 東子」といった。
「とうこで~す。ねえ、今日も来てくれるんでしょ?」
「無理だよ。昨日は店が休みだったけど、今日は今から出るからさ。」
「えー!でもぉ、終わったら来てくれるよね?」
「何時になるかわからないし、朝まで客につき合わされるかもしれないよ。」
「とうこ、何時でも蓮のこと待ってるww」
東子に言い負かされる形で、蓮の帰宅場所は東子のマンションに決定したようだ。
確かに夕べの東子は奔放で、蓮が普段客にしてさしあげるのと同じくらい、奉仕してくれたっけ。また今夜も、いや明け方か?味わうのも悪くはないな。
ちょっとしたスケベ心だった。
そして、また蜜の時を過ごし・・・

そんな蓮のスケベ心を見透かしたように、それから東子は連日電話してくるようになった。
しばらくすると、「風花」のオーナーの杜萌さんも、蓮の付き合いの悪さに、どうしたのか?と訝しげに見るようになる。
半同棲のようになりかけた二人に、杜萌さんからのチェックが入った。
「客にサービスできないホストはいらない。女がいるのはかまわないが、仕事に支障がでるならば別れろ」
もともと合コンのお持ち帰りが長引いただけだ。
東子はかわいいけれど、蓮にはもっと守らねばならぬものがある。
さて・・・どうやって斬るか・・・

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