2017-08

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vol.11 探していたもの。

その女は、ずっとうつむいたままだった。
蓮が向かい合った席に座ってからも顔を上げることもなく、囁くような声で、挨拶めいたようなことを言っていたような気がする。
ホットコーヒーに入れたスティックシュガーの袋を指で折り曲げたり、ひねったり。
まるで、目の前に自分の息子がいるのを忘れてしまったかのようだった。

「それで」
蓮が母親だというその女に声をかける。
「俺の名前ってなんていうの?」
そこで、初めて人と対峙していたことに気づいたように、その女は顔を上げた。
23歳の子どもの母親にすると、かなり若い作りの顔のように見えるが、目尻にはもう小じわが隠せないし、赤茶色に染めた長いストレートの髪にも、ちらほらと白いものが見え隠れする。
確かに、蓮とそっくりの切れ長で涼しい眼をしている。
この人はいくつになったんだろう。そんなことを蓮が推測してみるけれど、女の歳はわからない。
「あんたの名前は、立川・・・立川 陸よ」
「たちかわ?立川 陸・・・」
馴染みのない名字をつぶやいてみる。
色気のない名前だな。よっぽど「沢村 陸」のほうが格好いいじゃないか。
ま、そんなことどうでもいい。
問題はこの女が、俺の母親だと名乗ってきたことだ。
どんな裏があるんだろう。

「よし、名前はわかった。じゃ親父は?」
「・・・」
「なんだ、いないわけじゃないだろう。こうして息子の俺が生まれてるんだからさ。」
「いないわよ。」
「いないって・・・じゃあ、あんたはマリア様なのか?SEXもしてないのに、いきなり身ごもって俺が生まれたってことなのか?」
わざと乱暴な言い方をして、蓮が口元で冷たく哂う。
「・・・あんたの父親は、ここにはいないのよ。近くて遠い、塀のなか。」
「・・・」
今度は蓮が絶句する。

たとえば、蓮は想像する。
俺の母親は、俺を身ごもった途端、最愛の夫を交通事故で失った。
悲しくて悲しくて、俺を育てる手立ても勇気も失くした母親は、思い余って施設に捨て子する。
それでも、その子が気になって、いつもいつも施設に何気に見に行って、最後には名乗りを上げてハッピーエンド。
・・・そんなのは、夢だ。
まったくの妄想だった・・・。

「へー。母親が母親なら、父親も父親だな。」
「陸、さん。」
名前に「さん」をつけて、他人行儀に母親が蓮を呼ぶ。

「どちらにしても、あんたに父親はいないわ。籍も入れてなかったから。」
ぷっ、と蓮が吹き出した。
「いいよ。どっちにしても。今までは居なかった親だ。期待もしてないし、これからだってするつもりもないし。」
「陸・・・」
疲れた顔の母親が、すがるように言う。
「会いたかったのよ、ずっと。」
「・・・」  ・・・俺だって会いたかったよ。
「あんたを置き去りにしてから、ずっと施設を気にしてたわ。」
「・・・」  ・・・どうして迎えに来てくれなかったのさ。
「いつのまにか施設がなくなってたときは、どうしていいかわからずに泣いて暮らしてた。」
「・・・」  ・・・でも、こうして探し当ててくれたんだね。
「こんなに、立派になって・・・」
「・・・」  ・・・親はなくても子は育つのさ。
「会ってくれるなんて思わなかったから・・・嬉しくて・・・」
「ね、なんか俺にしてほしいわけ?」
「え?」

みるみるうちに涼やかな母親の瞳が潤み、今度は人目もはばからずに声を上げて泣いている。
「謝ろうと、思ったのに・・・ただ、会いたかっただけなのに・・・」

この生き物はなんだろう。
ライオンだって、父ライオンと離れても、母ライオンは子どもを守って生きていく。エサも雄でなく、雌が狩りをして捕らえてくる。
この女は人間の母親だというのに、自分の勝手で子どもを手放し、そして今度は勝手に探して会いに来る。
俺の都合も、気持ちも何も考えずに。
動物以下だな。
でも、それでも俺にとっては、俺のルーツなんだ。
俺の母親なんだ。
そう思うと、照れくさいな。頬を流れるのはなんだろう。
この暖かくて滴り落ちるもの。
これは愛なのか。これが愛なのか。

● COMMENT ●

・・・( ̄  ̄;) うーん 深い

。。。

愛。。。。だな。

はい。

愛ですね。フー ( ̄‥ ̄) = =3

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愛ですか。

愛って・・・。未だに自分は難しいです(>_<)
蓮の母親は本当に会いたかっただけなのか、謎ですね~。

( ̄~ ̄;)ウーン・・・

そうですね・・親子の愛は、夫婦や男女間の愛とは違うのだと思います。根本的に・・・
憎みながらも、憎みきれない。
また、憎しみが肉親だからこそ増長してしまう・・・
そういうことって一概には言えないけど、やっぱりあるんだろうなぁ・・・。
蓮のお母さんはなにか含みがあるのかしら。わからん・・・

あぶね~ 読み逃すとこだった'`ァ'`ァ'`ァ(;´Д`)'`ァ'`ァ'`ァ
なんだかんだ言っても 陸もおか~さんに会えてうれしいんぢゃん(*ノДノ)キャ!!

そうみたい!

自分で書いててなんだけど、蓮はやっぱりココロの何処かで、母親を求めてたんだと思うよ。
それを後押ししてくれる誰かを、待ってたのかも。


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