2017-08

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vol.30 再会。

tulip_y01.jpg


無菌室に入ってからの蓮は、ただ寝ることと少量の食事を口にすること、そして点滴との戦いだった。
白い肌は一層白くなり、トイレ以外は殆どベッドから降りることもない。
サイドテーブルの上に置いたノートPCも開くことは殆どなかった。

東子を普通の女子大生からキャバクラ嬢にしてしまったこと、「もう二度とあなたには会わせない」という東子の母親の言葉、そして何よりも「蓮がわたしをこんな女にした」という東子の捨て台詞。
目をつぶると今まで貢がせたり、騙したり、モノのように扱ってきた女たちの顔が次々と浮かんでくる。
それも、ひとりひとり名前を覚えているかというと、ちっとも自信はない。
「顔と身体は覚えてるんだけどな。」そんな独り言を言ってみたりする。

ホームの施設長や頼子や先崎に心配かけてるだろうな。よっぴー・・・子どもたちも「お兄ちゃん来ないね」って不審がってるだろう。
せっかく店を借りる契約はしたものの、このままじゃ開店はおろか準備だって出来やしない。店で使う男の子たちの面接もしなきゃならない。

・・・そして・・・ろずだ。
今ごろ、どうしているんだろう。
裁判も気にかかる。
彼女、洲と一緒に住めるんだろうか。
ろず・・・ずっと声を聞いていないよ・・・。

母を恋しがる子どものように、ろずを求める蓮だけれど、今はこんな無菌室にぶち込まれて看護婦の管理下にある。
せめて、電話の声を聞きたい。
でも、俺にそんな資格があるのか?
会いたいよ、ろず。
会えないよ・・・ろず。

眠れない夜、月明かりに誘われて窓際で空を仰いで見る。
あれはいつかろずと同時に見た、同じ月なのかな。同じ星なのかな。
あのときは幸せに酔っていたけれど、今は最悪だ。
そばに居ないろずを近くに感じたあの時。
今は冷たい白い壁がふたりを遮る。
いや、モノばかりじゃない。距離ばかりじゃない。
ろずが遠い遠いところへ行ってしまったような、そんな空虚なココロをどうすればいいんだろう・・・。
今夜も凍えた猫のように、涙でずぶ濡れになって丸まって眠るんだ。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

「・・・今日もあいにくの雨の一日になりそうです・・・これでゴールデンウィークも、残すところあと2日・・・」
テレビでお天気お姉さんが、今日の予報を読む声が聞こえてくる。

そうか・・・下界はゴールデンウィークか・・・さぞ東京はガランとしてるんだろうなぁ。
窓越しに雨降りの風景を眺めながら、いつまでこの状態でカンズメされればいいんだろうとつらつらと考える。
ベッドで横になっているだけの人生ならば、もうすべてが終わってしまったも同然だと思うのだ。

毎日恒例の回診が終わったあと、ドアを出て行こうとした看護婦の一人が「あ」と思い出したように戻ってきた。
「沢村さん、そういえば昨日お見舞いの方が見えたんですよ。」
「見舞い?」
昨日は発熱して一日中うとうととしていたのだった。
熱がひどく上がれば薬で下がりもするが、38℃前後をいったりきたりでは体力だけ消耗して寝ているほかはない。
「熱があるので面会は・・・、とお断りしたらお帰りになっちゃったんですけどね。」
「だれ?」
蓮はまた先崎か、そうでなければ頼子が先崎に聞いてやってきたのかと思った。
「綺麗な方でしたよ。鈴村さん、っておっしゃってました。」
ポケットから取り出したメモを見ながら、看護婦がその名前を言った。

鈴村・・・鈴村 翠・・・彼女だ!ろずだ!
あまりにも連絡ができないから会いにきてくれたのか・・・。そんな時に熱など出して機会を逃すなんて、なんて情けない俺の体・・・。
これほど会いたくて会いたくているのに会えないなんて、やはり何かが狂ってきてる。
俺の中の地軸がまっすぐに貫かれていないんだ。
看護婦が出て行った後、蓮は顔を枕に押し当てて声を殺して泣いた。
すぐそばまで来てくれたろずに会えなかったことが、とてもとても切なかった。

雨の午後は昨日からの熱のせいか倦怠感がひどく、うつらうつらしていた。
ノックの音がしたような気がして、それでもなかなか首をドアの方に向けるのもかったるく、もう一度目をつぶった。
白衣を着けてマスクをかけ、頭には白いキャップ。
看護婦かと思ったが、どこかで見たことがあるような目だ。

潤んだような瞳・・・

「翠!」
慌ててベッドに起き上がる。いや、起き上がろうとしてもなかなか体が上がらない。
ドアに向けて両肘をベッドにつき、やっと上半身をろずに向けた。
「翠・・・」
「陸、だめじゃない!」
久しぶりのろずに、ハグしてもらえると思っていたら、ぴしゃりと叱られた。
何のことか判らずにぽかーんとしていると、ははぁ、この前の東子との一件を看護婦に聞いたのかと勝手に解釈し、蓮は弁解を始める。

「あ・・・翠?あの・・・この前の時はごめん。いきなり電話が切れちゃって。教えもしないのに前に付き合ってた女がいきなり現れてさ・・・」
「陸ったら!そんなことじゃないわよ。」
「え?」
「あなた、食事を殆どとらないんですってね?病人が病気を治そうとしないでどうするの?」
「あ・・・あのぉ・・・」
「だめよ、誤魔化しても。あなたは身長ばかり高くて、ちっともお肉がついてないんだから。ご飯を食べずにどうやって病気と闘うの?」
「いや・・・そんなことは・・・」
「点滴で栄養摂ってるからいいなんて、思ってないわよね?人工的に栄養を摂らされるのと、自分から進んで栄養を摂るのと、どっちが健康的?答えなさいよ!」
「そ、そりゃぁ・・・ご飯・・・」
勝ち誇ったように、ろずが鼻をフン、と鳴らす。
「ほーら、わかってるんじゃない!だったら、しっかり食事を摂って栄養をつけて。病気を治して。そうしないと、わたしのこと迎えに来られないじゃない。」

蓮はろずが何を言っているのか、すぐには理解できなかった。
「迎えに・・・って・・・」
そのまま蓮はろずを見つめたまま、しばらく動かなかった。
「迎えに・・・って・・・翠?」
呆けたように同じ言葉を繰り返した。
「あ・・・もしかして・・・翠、もしかして!」
「そう!家裁でね、洲といっしょに暮らせるって判決が出たの!わたし今、洲といっしょに住んでるのよ!」
「翠!そうなのか!」

蓮は洲に会ったことはないけれど、ろずが息子と一緒に暮らせることが自分のことのように嬉しかった。
「え・・・?それで今日は洲は?」
「実家に預けてきたわ。昨日もよ。昨日も今日も、二日続けて茨城に来ちゃったわ。遠いなぁ!」
「もうじきつくばエキスプレスが開通するよ。そしたらすぐだ。秋葉原から1時間もかからないよ。」
「その秋葉原まで家から1時間かかるのよ。待ち時間入れたら往復5時間くらいかかるわ。」
「そんなの!そうかぁ・・・洲といっしょかぁ・・・会ってみたいな、洲に。」
「だから・・・ね。早く元気になって、わたしたちを迎えにきて。」
「・・・うん。」

そうか、ろずは一歩も二歩も前進してる。
それなのに、俺は後ろ向きに戻ってる。
過去の過ちの亡霊にとり付かれ、病気を治そうという気持ちにもなれないなんて。
本当にどうしようもない男だな。
もう二度と過去に戻ったりしない。
病気なんか気で治してやる。
俺には守るものが沢山あるんだ。
「あすなろホーム」、施設長や頼子、店も開店に向けて動かないと。
そして、ろず。彼女と息子を守るんだ。

優しい言葉や見舞いの言葉より、点滴や薬より、ろずの叱咤激励が効いた蓮だった。

● COMMENT ●

(ノ´▽`)ノオオオオッ♪

良かったです!!ろず最高っす。
早く 病気と闘える体力が戻るといいね^^; 蓮さん

才才-!!w(゚o゚*)w

ふささん( ̄Д ̄;; は、早いっ!
(^w^) ぶぶぶ・・・
優しくしちゃだめなんだね、きっと。
蓮は叱咤激励しないとね。

どこにいても

同じ月同じ星に決まってるじゃんか!蓮よぉ
いくら落ち込むことがあったって常に前向きでいなくちゃね!

そぅだよね?

前向きになれと言っても、なかなか病気ではなれないのかもしれないけど。
でもやっぱり好きな人の言葉だから、すんなり聞けるのかな。

p(^^)qガンバッテ!

好きな人の言葉って薬より効くかもね・・・
蓮!
病気に負けないで

(* ̄ρ ̄)”ほほぅ…

やっと うまく噛み合っていくのヵな?
蓮とろず。。。。

ぉお(゚ロ゚屮)屮

すげーなロズ。。。蓮をここまで本気にさせてたんだ(〃ω〃) ポッ

★ぁりが㌧ヾ(。・ω・。)ノぁりが㌧★

本当にね、怒られたな~
てか、いっつも怒られてる気がするなアイタタ、、(ノω=;)。。。
これ見たら、また怒られるかな(((*´∀`)ケラケラ
自分のために、そして何よりもろずのために。
治してみせます!

完結にむけて

蘭々ちゃん<そうだね、魔法の言葉。好きな人の言葉は妙薬だよ。
キバしゃん<これからを見守りたい蓮とろずですよ。
mama<蓮が本気になったら・・・(*/∇\*)キャ 怖いような・・・(/´△`\)ヤメテー!!(/▽*\)~♪ イヤァン ( ̄ε ̄@)ぶっちゅ~
蓮<またまたのご登場ありがとうございます_(^^;)ゞ
(゚-゚*)(。。*)ウンウン!全快の報告待ってますよ。
無理はしないでね。

チラッ (・_| ジィィィッ

蓮のことずっと待ってます^^
早く治るといいなっ。

(≡ ̄ー ̄≡)ニヤ

待ってました!ろず!
これで蓮とろずのコメントが出揃ったな( ̄∀ ̄*)イヒッ


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